『フォスター・フォーラムだより』第36号をお届けします(11/26)
今年も、東京都の消費者『交流フェスタ』に出展してきました。そこでの出会いを通じて感じた、金融経済教育の課題について報告しています。
また、9月30日に「大学生の金融リテラシー調査の報告会」を開催しましたので、その報告記事も掲載しています。
学習会のご案内です。11月30日午前10時半より、「おとなの金融力セミナー(初心者編)」を飯田橋で開催します。
初心者ではなくても、草の根の金融経済教育に関心がある、どんな取組みか見てみたい、という方のご参加も大歓迎です。
今回も最後までお読みいただけると幸いです。
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『フォスター・フォーラムだより』 No.36 2016年 11月26日
発行:不定期
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★―★ CONTENTS ★―★
1. 消費者『交流フェスタ』出展報告
2.「 大学生の金融リテラシー調査報告会」のご報告
3. 編集後記
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消費者『交流フェスタ』出展報告
いろいろな消費者の方々と交流する機会を持ちたいと考え、3年前から、東京都の消費者『交流フェスタ』に参加しています。
今年も、10月7、8日に新宿駅西口広場イベントコーナーで開催されたフェスタに、「ためしてみよう、あなたの金融リテラシー」というテーマで出展してきました。
今年は「金利1%、6カ月物という定期預金に100万円預けたら、満期時にいくらの利息を受け取ることができますか? 利息にかかる税金は考慮しません。」という問題を持参しました。
答えはA.1万円、B.5千円、C. 6千円という三択です。
「簡単すぎる!」と思われるかもしれませんが、昨年のフェスタにこの種の定期預金と投資信託の抱き合わせキャンペーンの問題を持参し、銀行でいう金利とは年利のことだとか、「○か月物」の意味を正確に理解できていない人が相当数いることに気づきました。そこで、今年は思い切ってこのような簡単な問題を持参することにしたというわけです。
両日あわせて200名近い方が当会ブースに立ち寄り、この問題に取り組んでくださいました。
私たちの狙い?通り、A.の1万円と回答された方が3割強ほどいらっしゃいました。
「○か月物」という言葉の意味が理解されていないことが誤答の原因です。
「この○か月物という言葉の意味を以前からずっと知りたいと思っていたんです」と言われる方もかなりいらして、この問題を持参した甲斐がありました。
分からないことがあっても銀行の担当者には聞きにくいと感じている方が多いことがうかがわれます。
正解のB.の5千円を選択した人は4割弱でした。
正解した人の多くは、この種の定期預金を利用したことがある方が多く、中には「私も引っかかったわよ〜」と苦笑しながら回答され、私たちの出題意図をズバリ指摘される方もいらっしゃいました。
思いがけない発見だったのは、C.の6千円を選択する人が想定以上に多かったことです。
直接お話をしていると、パーセントの計算が暗算でできない方もかなりいらっしゃることに気づきます。
また、正解のB.を選択された人の中でも、「今は金利が低いからね〜」と当てずっぽうで回答される方が、高齢の方の中に目立ちました。
今年のフェスタ参加を通じて、気づいたことは次の2点です。
一つは、金融機関に勤務している(いた)者が当然のように使っている用語を、世の中の人は必ずしも当然には理解していないということです。
金融機関の方々には、販売勧誘用資料などで使われている用語の再点検をお願いしたいと思います。
もう一つは、金融商品を使いこなすには一定の計算力が必要となりますが、例えばパーセンテージの計算ができない人が思っていた以上に多いことでした。
リスクやコストはパーセンテージを使って表示することが一般的ですが、再考が必要です。
この点については、次の記事でも関連する報告をしていますので、併せてお読みいただけると幸いです。
フォスター・フォーラムでは、今年4月に『おとなの金融力ドリル』を開発しましたが、今回のフェスタ参加を通じて、いろいろな消費者の方々にこのドリルを使っていただき、見直していく必要があるとも感じました。
そのためにも、冒頭で紹介したような“草の根の学習会”を継続的に開催していきたいと考えています。
こうした活動に関心のある方は、こちらよりお問い合わせください。
(ご参考)
2.「 大学生の金融リテラシー調査報告会」のご報告
9月30日に掲題報告会を開催しました。
先に紹介した『おとなの金融力ドリル』の開発に協力くださった島義夫先生(玉川大学経営学部教授)が、本ドリルを使って金融関係の講座の受講生約110名を対象に調査を実施されましたので、その分析結果の概要を、論文発表に先駆けご報告いただきました。
その一部を紹介すると、
・ 同じ問題を、講座の受講前(4月)と受講後(7月)に解いてもらったところ、正答率は45.7%から52.3%に上昇した。
・ 特に、投資信託や保険商品などの基本的な知識を問う項目での改善が目立った。
・ 一方、手数料や利回りの計算といった項目では、講義の中で一通り教えたにもかかわらず、ほぼ改善は見られなかった。
こうした結果を踏まえて、島先生からは、
基本的な知識を問う問題については教育の効果が認められたが、コスト計算のようにやや複雑な計算を必要とする問題は、教育の成果はあまり見られない。この分野については、教育だけでは不十分であり、情報開示ルールによる補完や具体的な例示が必要ではないのか、という提言をいただきました。
わが国では、手数料はパーセンテージで表示するのが一般的ですが、パーセント表示だと、実際にいくらの負担になるのかを計算できない人が相当数いるという現実を認識すべきなのかもしれません。
欧米では、パーセント表示だけでなく金額表示も行われているとのことです。
例えば、3%の販売手数料を説明する場合、「この投資信託を100ドル購入すると販売手数料を3ドル支払うことになる」といった例示的な表示が行われているようです。
パーセント計算ができない人がいるということを前提として商品説明が行われているようですが、わが国でもそういったプラクティスが必要となっているように思います。
「消費者にわかりやすい表示」に取り組まれる金融機関が増えていますが、まずは、リスクやコストのような、いわゆる不利益情報について、こうした表示の工夫から始めてみてはどうでしょうか。
最後に、本報告会は、島先生とご参集いただいた方々のおかげで、大変実りあるものとなりました。この場を借りてお礼を申し上げます。
島先生が論文が公表されましたら、このメルマガでもご紹介させていただく予定です。
(報告者:永沢 裕美子)
3.編集後記
◆「投資商品の手数料開示〜金融機関に行動原則〜金融庁案」という記事が11月25日の日経朝刊の1面を飾ったこともあり、昨日開催された金融審議会は傍聴の方でいっぱいでした。金融審での審議もいよいよ大詰めを迎えています。次の号では、金融審議会での審議について報告したいと思っています。
◆個人的なことですが、11月の初めに、私と同じ誕生日に初孫が生まれました。しばらくウチに同居ということになり、ババ業に追われておりますが、ちょうど私宛に金融広報中央委員会から『ママとパパのための幸せとお金の知恵』という小冊子が送られてきました。「幸せな時だからこそ、将来のことをしっかりと考えてね」と息子夫婦にプレゼントしておきました。この小冊子に関心のある方はhttps://www.shiruporuto.jp/life/arakaruto/family/ からご覧いただけます。
(永沢裕美子)
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