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【フォスター・フォーラムだより】第32号をお届けします

今回は、日本銀行が2月24日に公表した論文「日米家計のリスク資産保有に関する論点整理」について紹介しています。金融経済教育や投資信託の普及に関心のある方には一読をお勧めしたい論文です。

前号編集後記でもお伝えしましたが、金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」が最終報告を公表して3年が経過したことから、フォスター・フォーラムでは、この間、わが国の投資信託がどう変わったか、新しく入れた規制は期待通りの働きをしているか等を検証する作業を、有志を募って行いたいと考えています。4月から5月にかけて意見交換を行い、6月を目処に報告書に取りまとめ、関係各所に提出することを計画しています。

この作業に関心のある方は、件名に【投信はどう変わったか検証PT・参加希望】、本文に①お名前、②連絡先(E-mail)、③所属をご記入の上、yumiko.nagasawa@fosterforum.jp までメールをお送りください。

投資家だけでなく、投信会社や販売金融機関、これらに所属されている方、ジャーナリストやファンド・アナリストの方々の参加も大歓迎です。報告書では必要であれば匿名での扱いもさせていただきます。

多くの方々の参加をお待ちしております。

最後に、編集後記で、1月15日に開催された「投信ブロガーが選ぶFund of the Year」の表彰式に参加してきましたので、その報告をしています。

今回も最後までお読みいただけると幸いです。

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『フォスター・フォーラムだより』 No.32      2016年 3月5日

                          発行:不定期

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★―★ CONTENTS ★―★

1. 日銀の公表論文「日米家計のリスク資産保有に関する論文整理」のご紹介

2. 編集後記

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1.日銀の公表論文「日米家計のリスク資産保有に関する論文整理」のご紹介

「貯蓄から投資へ」が語られる時に必ずと言っていいほど引き合いに出されるのが、日米の家計のリスク資産保有比率の差です。

米国が48%に対して日本は16%であることから、「日本人は・・・」という議論になることが多いのですが、2月24日に日本銀行が公表した掲題論文が興味深い問題提起をしています。

◎統計上の問題

48%と16%という数字の差に目が行きがちですが、本論文ではまず、統計上の問題として米国の数字には個人企業が含まれていることを指摘した上で、それを除いて修正すると、米国の数字は48%ではなく31%になることを指摘しています。

その上で、31%と16%の差を考える上での論点として「確定年金制度(DC)の問題」と「金融リテラシーの問題」を挙げています。

◎確定年金制度(DC)の問題

米国に401Kと呼ばれる確定拠出年金制度が導入されたのが1981年。

80年代初めに15%程度であったリスク資産保有比率が31%にまで上がった背景として、投資信託の保有率が上がったことを指摘しています。

興味深い指摘として、

・  消費者アンケート調査によると、回答者の半数が「初めて株式投資を行ったきっかけが雇用者年金プランを通じた株式投資信託の購入であった」と回答、

・  家計の投資信託の保有形態に関する調査によると、DC単独による投信保有よりもDC以外での口座でも投資信託を保有している家計の方が多く、このことから、DC加入を契機に、投資信託が年金資産運用以外の用途にも活用されるようになっていることがうかがえる

という指摘をしています。

これに対して日本は、確定拠出年金がスタートしたのが2001年。

米国に比べて20年の遅れがあることに加えて、

・  年金の使い勝手など制度整備の問題

・  制度がスタートしてからの投資環境の悪さ(株価低迷)が投資の成功体験につながらなかったことが、投資促進作用として働かなかった

と指摘しています。

こうした日米の違いは、家計のリスク資産保有に関する認識面にも表れているとも指摘しています。

一例として挙げているのが、投資信託の保有動機です。

米国では「老後資金形成」の回答が最多であり突出しているのに対し、わが国では、「特に目的はない」との回答比率が最多というのは考えさせられる問題です。

◎  金融リテラシーの問題

本論文は、日米の金融リテラシーの差はそれほどでもないと指摘しています。

国際比較調査の結果によると、設問がインフレ率・預金金利・分散投資など基本的な内容であるにもかかわらず、日米の全問正答率は3割前後にとどまっていることなどが指摘されており、日米ともに金融リテラシーはそう高いとは言えないようです。

なお、同調査によるとドイツとオランダが突出、ロシアが極端に低いという結果が出ているそうです。

また、同調査では、金融リテラシー・レベルを消費者属性別に調査しており、年齢(概ね50代がピーク)、性別(女性の方が低い)、学歴(高学歴ほど高い)といった属性別の特徴が各国に共通して観察されたということです。

本論文では、同調査結果を用いた回帰分析で、金融リテラシー・レベルと老後資金形成に向けた行動の実行率に明確な正の相関関係が認められたとも指摘しています。

その上で、老後に向けた自立的な生活設計・資金形成においても、金融リテラシーの向上が不可欠であるという結論で締めくくられています。

本論文は日本銀行のホームページ(https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2016/ron160224a.htm/)からお読みいただくことができます。

(報告者:永沢裕美子)

2.編集後記

◆1月15日夜に日比谷コンベンション・ホールで開催された「投信ブロガーが選ぶFund of the Year 2015」の表彰式に出かけてきました。1席800円のチケットがすぐに完売となり、当日は200名定員のホールが満席となるほどの盛況でした。この催しは、ファンド評価会社が公表するFund of the Yearに対抗して、投信ブロガー有志の皆さんが集まって始めたもので、今回で9回目になるとのこと。今年はなんと159名のブロガーが投票したそうです。投票結果についてはこちら(http://www.fundoftheyear.jp/2015/)からご覧いただけますが、運営委員長の rennyさんが「投資信託のコストが大きく引き下げられた」ことが2015年の最大の出来事だったとお話しされていたのが印象的でした。

◆今回は日本銀行の論文を紹介しましたが、投資が生活の一部として根付くためには、まずはやってみること(経験すること)と、成功体験が重要なように思えてきました。ともに難しい問題ですが、後者はとりわけ難問です。成功体験はコントロールできませんが、どうすれば失敗したという思いを減らせるかはコントロールできる問題のように思えます。(永沢裕美子)

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