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金融審・リスクマネーWG委員報告(第4回)

事務局長の永沢裕美子が「金融審・新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」に委員出席しています。第4回(9月10日)の報告をさせていただきます。

第4回は、元経産省官僚で現在慶応大学教授の川本明氏から、「イノベーション・エコシステムの可能性」というテーマで、米国でベンチャーが育つ社会的な背景について講義を受けた後、金融庁から英米のクラウドファンディングの現状について説明がありました。多くの論点の提示がありましたが、不消化感は否めず、次回に持ち越しとなりました。

ここでは、一般投資家に関係あるクラウドファンディングについて、金融庁の説明を中心に簡単に報告させていただきます。

なお、報告者のバイアスや聞き間違いがある可能性がありますが、その点はご容赦ください。本WGの議事録は、金融庁のHPにて公表されておりますので、そちらもご確認いただきますよう、お願いいたします。

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平成25年9月10日開催 金融審・リスクマネーWG(第4回)

 

金融庁からの説明。

・      クラウドファンディングには「寄付型」「購入型」「投資型」があるが、このWGでは「投資型」のみ審議する。

・      当局は、発行者と投資者との間に仲介者=ポータルサイトの運営者が介在するものをクラウドファンディングと捉えている(発行者が投資家から直接資金調達する自己募集はクラウドファンディングの範疇には入っていない。)

・      当WGでは、「仲介者」に対する規制と「発行者」に対する規制の双方について検討予定とのこと。

・      米国と英国の制度比較について説明があった。下の表を参照。なお、2012年4月に米国でJOBS法(雇用創出法)が成立して、にわかにクラウドファンディングが注目を集めているが、米国ではSECの規則がまだ出来ておらず、クラウドファンディングによる資金調達は米国では事実上困難。一方、英国では、現行規制下でも無認可でも可能。しかし、トラブルも多発しているようで、2012年8月に英国当局(旧FSA)が詐欺リスクがあること等の注意喚起を行っている他、今年3月にポータルサイト運営者により自主規制機関が設立される等の規制の動きあり。

 

《米英のクラウドファンディング規制比較》 ★米国は施行後の規制について記載

米国

英国

法制上の取扱い 施行前のため事実上困難 現行規制の下で可能
投資額等に係る規制 (施行された場合)あり募集総額 年100万$未満各投資家の投資額 2000$ なし
仲介者(ポータルサイトの運営者) SECに登録した者 FCAの認可を受けた者。ただし、勧誘対象を富裕層等に限定する場合は無認可でも可
仲介者に対する規制 SECによる監督リスクに関する情報等の提供義務発行者による詐欺のリスクを軽減するための措置を講じる義務 等 FCAによる監督適切で、公正で、明確で、紛れのない情報を提供する義務等
発行者に対する規制 SEC、投資者、仲介者への情報提供義務 募集額が年間500万€以下の場合は、開示義務を免除
自主規制機関 あり(登録義務あり) あり(登録義務なし、実務指針あり)

続いて、わが国で導入する際の論点の提示があった。

①   対象範囲

・      「インターネットを通じて起業者や事業計画と多数の投資者とを結びつける小口の投資」を念頭において制度設計することは適当か?

・      現状では匿名組合型のみだが、株式型も必要ではないか?

・      仲介者の参入が容易で、発行者にとって負担の小さい制度とすることの是非

・      詐欺防止のための制度的な工夫は?

②   仲介者に対する規制

・      現行法下では、匿名組合(ファンド持分)は第二種金商業者、株式型は第一種金商業者となるが、株式型の第一種は負担大ではないか。特例で規制緩和を検討してはどうか。

③   投資家保護の観点から、募集総額や一人当り投資額等に制限を設けてはどうか。具体的には、総額は1億円、一人当たり投資額は50万とか100万円という数字が出ていた。

④   詐欺的な取引防止策として、仲介業者を認可制とする、英米のように自主規制機関による規律等が考えられないか。

⑤   情報提供のあり方として、現行法下では、契約締結前書交付書面によって行われることになる。この書面にどの程度の記載を求めるべきか。

出席委員から様々な意見が出たが、プラットホーム運営業者(仲介者)は認可制とすべきという意見が多かったように思う。(しかし、後日別の機会に事務局と意見交換した際、認可制については当局の腰が引けているようだった。「裁量」というのが問題のようだ。)

私からは、インターネットという場の特性上、当局はもちろん市場の監視の目が行き届かないという懸念があること。また、小口の投資家ばかり集めているスキームで、事業の監視、ガバナンスが効くか疑問等の意見を述べさせていただいた。