フォスター・フォーラムだより No.8

執筆者 | 12月 19, 2012 | メールマガジン, 未分類

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★このメールは、フォスター・フォーラムのメンバーとお名刺を交換させていただいた方へ、
Bccで送信させていただいております。

師走も半ばをすぎ、お忙しい日々をお過ごしのことと思います。
フォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)です。
『フォスター・フォーラムだより』第8号をお届けします。

今回は11月にフォスター・フォーラムに加わった新メンバー、
坂本綾子が、金融広報中央委員会が発表した「家計の金融行動に
関する世論調査」(2012年)の中から、気になる点をピックアップ
してご紹介します。

また、今年3月に始まった金融審・投信法ワーキング・グループ
が12月7日に最終回を迎え、「最終報告書」がまとめられました。
委員として出席した永沢裕美子がその報告をします。

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『フォスター・フォーラムだより』 No.8        2012年12月19日
発行:不定期
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★―★ CONTENTS ★―★
1. 「家計の金融行動に関する世論調査」(2012年)の注目点
~金融に関する中立公正な情報提供元が求められている!~
2. 金融審・投信法WGを終えて
3. 編集後記
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1. 金広委「家計の金融行動に関する世論調査」(2012年)より
~金融に関する中立公正な情報提供元が求められている!~

日本人の金融行動を知る手掛かりとなる調査の結果が発表されました。
金融広報中央委員会による「家計の金融行動に関する世論調査」(2012年)です。
全国を対象とし、毎年行われるこの調査に注目している方もいらっしゃること
でしょう。
気になる回答4点をピックアップしてご紹介します。

① 金融資産残高の増減
1年前と比べて金融資産残高が「減った世帯」は約4割、「増えた世帯」は約2割。
「減った世帯」は40代以上に多く、「増えた世帯」は20代、30代に多い。

② 金融資産残高が増えた世帯の理由
「定例的な収入が増加したから」が4割弱、
「定例的な収入から貯蓄する割合を引き上げたから」が約3割。

③ 元本割れを起こす可能性があるが、収益性の高いと見込まれる金融商品に
ついて 「保有しようとは思わない」が8割強。

④ 金融に関する知識・情報の入手先
主に金融機関から(窓口、パンフレット類、広告、HPなど)が約7割

(いずれも2人以上世帯の回答)

①②から、若い世代を中心に収入が増えた世帯があり、増えた収入から貯蓄している、
また、貯蓄する割合を増やしていることがうかがわれます。
貯蓄先は預・貯金が中心で、③によれば株式や投資信託などを保有しようと
思わない世帯が多数を占めています。そして、金融に関する知識・情報の入手先は
④のとおり金融機関が約7割です。

この調査の結果を見る限り、数年にわたり政府が主導してきた「貯蓄から投資へ」
の流れはなかなか実現していないようです。
原因として、平均株価の値下がりや雇用環境の悪化なども考えられますが、
そうしたこと以前に、根源的な理由があるように思われてなりません。
国の政策として家計が保有する資産を投資に回そうと試みたとしても、実際に
おのおのの家計にとって投資が適切かどうか、投資に回せる金額、投資先として
どんな金融商品がふさわしいかは異なりますし、選択は家計にゆだねられて
います。まず整えられるべき環境は、家計の身近に、金融に関する知識・情報
の提供元があり、それがわかりやすく、かたよっていないことではないでしょ
うか?

先にご紹介した通り、知識・情報の取得先とし金融機関を挙げる世帯は約7割
ですが、続けての問「知識・情報の提供主体として望ましく思う先」(3つまで
の複数回答)では、金融機関が約5割に減少し「特定の業界に属 しない中立公正
な団体から」が35.3%、「金融の専門家から」が32.9%となっています。
決して少なくない世帯が、中立公正な団体や金融の専門家を求めているという
ことです。

寿命の延びとともに家計管理の期間が長くなる一方、金融商品の多様化・複雑化
はどんどん進んでいます。中立公正な立場から金融に関する知識・情報を発信
する団体の存在は、これからの社会の重要なインフラのひとつとして位置づけ
られるのではないでしょうか。

「家計の金融行動に関する世論調査」(2012年)の詳細は、「知るぽると」の
こちらのページから読むことができます。
http://www.shiruporuto.jp/finance/chosa/index.html
(報告者:坂本綾子)

2. 金融審・投信法WGの「最終報告」

今年3月から13回にわたって審議が行われてきた金融審議会の投資信託及び
投資法人(Jリート)法制の見直しに関するワーキング・グループが終了し、
「最終報告書」が公表されました。
本報告書は金融庁のこちらのページからお読みいただけます。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20121212-1.html

投資信託のみに絞って、本報告書の評価できる点と残念な点を報告させて
いただきます。

まず、評価できる点ですが、
第一に、規制緩和によって組成が可能になったファンド・オブ・ファンズ型や
仕組債型の投信について、「何らかのリスク量を制限するための仕組みの構築」
が提言された点です。
一部の委員から、事業者の商品組成の自由度を最大限保証すべきだという意見
が出ましたが、
こうした商品に内包するリスクは、情報開示や説明によってあらかじめ投資家
に認識させることは難しいという指摘や、
投資家が突発的に経験上予測できないような大きな損失を被る可能性を否定で
きない という指摘があり、
「規制やむなし」という意見が大勢を占め、こうした提言に至りました。

第二に、販売・勧誘時に行われているリスク説明について、定性的な説明では
足りず、定量的な把握や比較が可能となるよう、わかりやすく表示することが
適当であるという指摘が行われた点は、評価したいと思います。
現在、リスクの説明は「○○のリスクがあります」という文言を羅列する方法に
よって行われていますが、これでは足りないということになります。
リスクやコ ストとリターンが見合わない不合理的な商品の組成を抑制する効果
も期待できると考えます。

第三に、事務局(金融庁)が当初用意した論点にはありませんでしたが、
「投信会社がファンドを適切に運営しているかどうかのモニタリングやガバナ
ンスを投資家や受益者のみに期待することは難しい」という認識が示され、
「投信会社と信託銀行が投資家や受益者に対する受託者責任を負う者として、
適切な運用を行う義務があること、さらに当局による規制や適切な検査・監督、
業界による自主的なモニタリングを行うこと」が必要であることも併せて指摘
された点は評価できると思います。

最近では、ヘッジファンドに近い投資信託も登場していますが、伝統的な投資
信託と比べて大きな裁量が運用会社に与えられています。
投資家や受益者に代わって誰が運用者を監視するのかということも重要な課題
となってきているように思います。

さて、残念に思う点・課題として残された点ですが、
第一に、上記のような提言を、どこで・いつまでに・どのように定めるのかと
いう具体的な手続きが明確に示されなかった点です。

第二に、業界の自主規制機関である投資信託協会のあり方について、踏み込ん
だ審議や提言が行われなかった点です。これも気がかりです。

本報告書では投信業界の自主的な取組みに委ねるとする箇所が数多くあります
が、投信協会は業界団体という側面も持っています。自主規制機関としてルール
を定める場合には、業界のメンバーだけで密室でルールを決めるということは
望ましくありません。メンバーや審議の過程の開示を求めていくことが必要では
ないでしょうか。

最後に、今回のワーキング・グループでは、運用報告書制度の見直しも提言
されました。
フォスター・フォーラムは3年前の目論見書制度の見直しに関わりましたが、
今回は、個人投資家やファンドアナリスト、ジャーナリスト、ファイナンシャ
ル・プランナー、元ファンドマネジャー等に参加いただき 、運用報告書を利用
価値のあるものとするための意見・提言をまとめ、12月7日のワーキング・
グループに提出しました。
このメール・マガジンに添付しますので、お読みいただけると幸いです。
(報告者:永沢裕美子)

3. 編集後記

年初に、今年は金融教育に取組みことを宣言しました。
この1年を振り返ってみて、具体的な成果に結びつけることはできませんでした
が、金融教育の分野で実践的な活動をしている坂本綾子のメンバー参加を
得たことは、当会にとって大きな一歩になることと思います。
坂本は、大学時代から雑誌の編集に関わり、フリーランスの雑誌記者をして
きましたが、10年ほど前にファイナンシャル・プランナーの資格をとり、
子ども向けの金融教育のテキストの執筆や、行政とタイアップして市民向け
の金融学習講座を運営した経験があります。
来年は巳年。巳の原義は胎児の姿を表す象形文字で、新しい誕生を意味
すると言われます。
フォスター・フォーラムも来年は新しい飛躍を考えております。
来年も引き続きご支援の程、よろしくお願いいたします。

(報告者:永沢裕美子)
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