今回は、金融審議会のリスクマネーWGの委員報告と、金融庁
の横尾光輔氏らとともに参加したパネル・ディスカッション
での議論を掲載しています。「金融審でやりたかったこと・
やれなかったこと」について横尾氏が某誌で語られた中に感
慨深い一節がありましたので、それもあわせて紹介します。
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『フォスター・フォーラムだより』 No.13
2013年9月1日
発行:不定期
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★―★ CONTENTS ★―★
1.議論百出のクラウド・ファンディングとは(金融審報告記)
2.投信法改正と今後の投信販売(金融機関向けセミナーでの提言)
3.編集後記&ホームページリニューアルのお知らせ
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1.議論百出のクラウド・ファンディングとは
アベノミクスの三本目の矢の金融版として、6月下旬から、
金融審議会に「新規・成長企業へのリスクマネー供給のあり
方等に関するワーキング・グループ」が設置され、クラウド・
ファンディングや地域における資本調達等を促す仕組み、新
規上場のための負担軽減等について、審議が始まっています。
3回目が終わったところですが、特にクラウド・ファンディ
ング(Crowd Funding)に委員の質問が集中しています。
クラウド・ファンディングとは、日本語では「大衆からの資
金調達」という意味ですが、インターネットを経由して、
不特定多数の人(群衆=クラウド)から小口のお金を集めて
事業を支援することを指す新しい概念だそうです。
わが国でも、震災復興時に零細な事業者の再建のための資金
集めに一役買ったことから、急速に世の中の関心を集めるよ
うになっています。
NHKの朝のニュースでも紹介されました。
http://www.nhk.or.jp/ohayou/marugoto/2013/06/0618.html
NHKでは「購入型」と「寄付型」を紹介していま
すが、金融審では、リターンを期待してお金を出
す「投資型」について審議をしています。
これまで3回開催された中で分かったことは、
クラウド・ファンディングの実態は誰も把握でき
ていないこと
「投資型」を手がける事業者はまだまだ少ないこ
と
現時点で確認できる「投資型」は匿名組合を使っ
て作られているということ
です。
第3回では、「投資型」のクラウド・ファンディ
ングのためのプラットホームを運営するM社社長
から話を聞きました。プラットホームとは、資金
の欲し手である事業者と、資金の出し手である大
衆(クラウド)が出会う場という意味です。
同社の実績や、世の中に蔓延る詐欺的な投資ファ
ンドと差別化していくには何が必要か等について
ヒアリングしました。詳細は「リスクマネーWG
第三回 報告メモ」(添付ファイル)をご覧くだ
さい。
第4回(9月10日)もクラウド・ファンディング
に関するヒアリングと意見交換が行われる予定で
す。
2. 投信法改正と今後の投信販売(金融機関向けセミナーでの提言)
7月上旬に、民間5団体の主催により、「個人投
資家の裾野拡大と投信の役割」と題する金融機関
向けセミナーが全国5都市で開催されました。投
信法改正を担当された金融庁の横尾総務企画局市
場課企画官(当時)や菅原弁護士とともに、私も
パネラーとして参加させていただきました。
パネル・ディスカッションの要旨はこちらをご覧
ください。
http://www.matonavi.jp/upload_file/Final_Seminar_201308.pdf
横尾氏が「金融審でやりたかったこと、やれなか
ったこと(担当者の個人的雑感)」を月刊『New
Finance』5月号で語っておられました。WGの席上
では伺えなかった担当者の心中を知ることができ
ます。
「・・・投資信託は、時として、投資家の利益と
販売会社の利益が合致しない局面を誘発しやすい
ビジネス構造があります。また、現在の主要顧客
層は、クラシカルな金融法制がイメージしたよう
な、的確な投資判断ができてその前提となる情報
も装備している投資家というよりも「一般消費者」
とカテゴライズする方が適切かもしれない。投資
に対する知見が必ずしも豊富でない投資家像とい
うものです。さらに、金融商品は、手にとって実
物を確かめたりできない点やその価値は将来に依
存するという点で特異なプロダクトであります。
こうした中で、投資信託をめぐってはいろんな
課題が出てきています。そうした環境の中で育っ
てきた投資信託マーケットのこの10年の歴史を
ある意味、清算するための措置というものが、
(今回の投信法改正の)一つの柱であると言える
と思います。
そのためには、「一般消費者」が本来持ってい
るコスト意識を喚起することが重要だと考えます。
非常にコスト意識の高い一般消費者ですけれども、
こと金融商品となるとコストの方はあまり意識さ
れないで、数字上のリターンばかりが注目されて
いるような気がします。そんな「一般消費者」で
も、分配金の裏にある元本の目減りというコスト
や、リターンをあげるためのリスクというコスト
に関する情報を装備してもらえれば、目線の厳し
い「一般消費者」になってもらえるのではないか
と考えています。
投資信託の供給サイドと投資家サイドの間にあ
る情報の非対称性というものをなくしていくこと
により、商品が選別され優良なファンドが育って
いく、そんなマーケットが育っていったらいいと
思っています。
私は担当が投資信託法制でしたので、投資信託
に限ってこういう議論を重ねてきましたが、実は
販売の現場では、証券会社であれば投資信託より
も仕組債に力点が移り、銀行では保険のほうに力
点が移ってきていると聞いています。こうしたリ
ーテール向け投資商品を横断的に考えたかったの
ですが、規制の根拠法律も違い、担当セクション
も違うということで、そこには限界があり、今回
は投資信託だけということになりました。本当は
全般的にリーテール投資商品をどう考えていくか
という目線で議論していくテーマだったとも考え
ています。・・・」
思うところは同じだったんですね。
横尾氏と菅原弁護士は、7月の人事異動で離任さ
れ、今は新任地でご活躍中と聞いております。お
二人に対して、お疲れさまでした という言葉を
贈りたいと思います。
3. 編集後記
「米国の投信評価会社の調査によると、日本の
投信はアジアで中国や韓国、インドなどよりも評
価が低く、世界でも劣位にある。評価が低い理由
は様々だが、最大の要因は販売手数料など費用の
高さにあり、投資家が利益をあげにくい構造にあ
る。」
これは、日経新聞の『大機小機』で、ペンネーム
自律氏が、ロンドンで開催された資産運用機関関
連のカンファレンスで聞いてきた話として書かれ
ていたものの一節です。
私たち“買う人間”がコスト意識を高めること
も必要ですが、それ以前に、“作る側”“売る側”
には、国際的に評価の高いファンドを供給してい
ただきたいものです。そのためには、説明のための
コストが少なくてすむ、シンプルな商品を提供いた
だくことや実績のあるファンドを奨めることが、
遠回りなようでも一番の近道なのではないでしょ
うか?
(担当:永沢裕美子)
☆フォスター・フォーラムからのお知らせ
来年10周年を迎えるにあたり、ホームページ
をリニューアルいたします。デザインを一新する
とともに、構成を全面的に見直し、よりわかり易
く情報を発信していけるよう内容の充実を図って
まいります。しばらくは工事中となりますが、切
替作業が終わりましたらあらためてご案内させて
いただきますので、どうぞよろしくお願いいたし
ます。
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がお名刺交換をさせていただいた方々にお送りさ
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