今回は、金融庁の金融審議会で検討が行われている「いわゆるプロ向けファンド」の規制の見直しについて、委員出席している永沢が報告しています。
プロ向けといいますが、高齢者を中心に消費者被害が多発していることから、一般市民に売るべきではない等、規制強化をすべきという意見が上がっています。これにベンチャーキャピタリストや市民ファンド系の方々から反対意見が出ています。プロ向けなのに、なぜ消費者被害が発生するのか・・・解説は記事をお読みください。
フォスター・フォーラムでは、当会の活動に関心を持ってくださっている方々と直接お話する機会を持ちたいと考え、FFサロンを開催しています。
今月は11月25日(火)11時半から、東京駅八重洲地下街にあるタリーズコーヒー八重洲地下街店にて開催しています。
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途中参加・途中退出OKです。気楽にご参加ください。
今回も最後までお読みいただけると幸いです。
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『フォスター・フォーラムだより』 No.22 2014年 11月11日
発行:不定期
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★―★ CONTENTS ★―★
1. 金融審報告〜いわゆるプロ向けファンドの規制見直しについて
2. 編集後記
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1. 金融審報告〜いわゆるプロ向けファンドの規制見直しについて
プロ向けファンドの制度を悪用する業者により、消費者が詐欺的な投資勧誘被害に遭う事件が全国的に多発していることを受け、金融庁では、同制度のあり方について検討するためのワーキンググループを立ち上げ、検討を行っています。
〈そもそも、プロ向けファンドって何?〉
金商法63条1項・2項の定める適格機関投資家等特例業務の制度のことです。適格機関投資家=プロであることから、プロ向けファンドと呼ばれています。
金商法が定められた時に、金融商品取引業は登録制とされましたが、例外として、このプロ向けファンドを組成し自分で投資家を集める場合には届出制でよいとされました。
登録制の場合は、登録要件が法律で定められ、この要件を充たさない者は登録を受け付けてもらえないのに対し、届出制は、届出書に必要事項を記入して提出すれば誰でも営業を始めるというものです。
プロ向けファンドの場合は、プロが相手だから、政府がそこまで立ち入らなくても問題はないだろうということで、届出制という特別な扱いが認められたのではないかと思われます。
〈何が問題なの?〉
ところが、この特例制度を悪用する詐欺的な事業者が現れ、2009年頃からプロ向けファンドをめぐるトラブルに巻き込まれる消費者が、高齢者を中心に急増したのです。
国民生活センタ―等に寄せられるプロ向けファンド届出業者(63条業者)に関する相談が年間1000件を超える年が続いてきました。
プロ向けなのに何故?と疑問に思われるでしょうが、実は、この特例制度では、投資家に適格機関投資家=プロが一人いれば、プロ以外の投資家を、一般の個人も含めて、49人まで入れていいことになっているのです。
適格機関投資家には該当しなくても、ファンドの内容をよく知っているファンド設定者の友人・知人には出資を認めてもいいと考えられたためだそうです。
また、プロが一人いれば、ファンドの運営者も変なことは行えないはずという判断も働いたためと思われます。
しかし、悪いことをする人は知恵が回るものです。形ばかりに適格機関投資家を仕立て、63条業者として届出をして、全く関係のない一般個人にアプローチを始めたのです。
11月6日に開催されたWGの第三回では、日弁連の加藤弁護士から、民事訴訟になっている事案の紹介がありました。
その数の多さ、全国的に発生していることに驚き、改めて被害の深刻さが分かりました。被害者の年齢は70歳以上、無職が目立ちました。
被害金額は数百万〜数千万円と大きいこと、被害回復がほぼ困難であること、詐欺被害事件として刑事立件されているものが多いことも報告されました。
こうした事態に金融庁や証券取引等監視委員会も手をこまねいていた訳ではありません。
悪質業者に対する監視を強化し、警告書を発したり、悪質事業者リストを作成して公表もしてきましたが、如何せん、63条業業者は届出制であり、日常的な検査・監督に服する義務はなく、当局にそのような権限は与えられていないのです。
悪質な事業者と分かりながら、届出を受理せざるをえず、悪いことをしていると推察されても、すぐには立ち入ることができない・・・こうした事態を放置していてはいけないということで、今年4月に証券取引等監視委員会や消費者委員会がそれぞれ金融庁に対してこの特例制度のあり方について見直しをするよう建議しました。
〈金融庁の当初見直し案と相対立する二つの反対意見〉
これを受けて、今年5月に金融庁がプロ向けファンドの販売可能な適格機関投資家以外の投資家の範囲を狭める見直し案を公表しました。
個人については、投資性金融資産を1億円以上保有するいわゆる富裕層と言われる個人投資家やファンド運営業者の役職員に限定するという案でした。
この金融庁案には、日弁連等から「プロ向けファンドの個人への販売は全面的に禁止すべき」という反対意見が、ベンチャーキャピタルの関係者等からは「販売が可能な投資家の範囲を狭めすぎている」という反対意見が寄せられました。
そこで、金融庁は上記改正案を取り下げ、金融審議会の下にワーキンググループを設置し、金融審の委員だけでなく、金融消費者被害に詳しい弁護士やベンチャーキャピタルの関係者等にも参加してもらって、望ましい規制のあり方について検討を行った上で、改めて制度改正を行うことにしたのです。
〈WGで出ている提案〉
こうして始まったWGですが、初回に、この特例制度を維持すべきかどうかから検討すべきではないか、という思い切った提案が出席した委員から提出されました。
そもそも他人の財産を預かって自己の裁量で投資を行うファンドの運用者が、プロを顧客としているというだけの理由で、業登録とそれに伴う当局の監督を受けなくという制度の妥当性を改めて問い直すべきではないか、という問題提起です。
届出制という例外的な取扱いを改め登録制に切り替えた上で、健全な事業者の活動を阻害することのないよう登録要件について考慮してはどうかという提案でした。
この提案には、ベンチャーキャピタル関係者からは、登録制への移行は規制強化と映ることもあり、反対の意見が相次ぎました。登録制に反対する理由としては、登録制では時間がかかりすぎる、登録制を強いられると金商法から離脱するファンドも出てきてしまい、近い性質を持つものが、一方で金商法の適用を受けず、一方で登録制になるというのはバランスを大きく欠くのではないか、といった理由が述べられていました。
ベンチャーキャピタル関係者からも、悪質な事業者を排除するための具体的な見直し案が提出されました。
こちらは、届出制という特例を維持しつつ、“不適格な”適格機関投資家を排除するために、資産要件やファンドへの出資割合の下限を設ける案や、出資する投資家が“洗練された投資家”に相当するとの意見書を弁護士に求める案、一般消費者が参加しないようにドクロマークを付けてはどうか等の案が提示されました。
こうした提案に対しては、悪質な事業者を排除しようとする姿勢を評価しつつも、悪質な事業者の排除に必ずしも有効とは言えないのではないか、といった意見が出されていました。
第三回(11月6日開催)が終わったところですが、参考人からの意見聴取が一通り終わり、次回以降は自由討議に入ることになりそうです。登録制への移行の是非を巡って、さらに白熱した議論が続きそうです。
★WGで席上配付された資料等は金融庁のHPのこちらのページの「投資運用等に関するワーキンググループ」からお読みいただけます。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/base_gijiroku.html#toushi_wg
(報告者:永沢裕美子)
2.編集後記
◆先月10日と11日に、東京都の『くらしフェスタ』に出展してきました。休日にわざわさご来場くださった方々、この場を借りてお礼を申し上げます。当日は『金融機関・商品との賢い付き合い方』というテーマで展示を行いましたが、立ち止まって「そうそう、この広告、そうなんだよね」とか「自分にも同じような経験があるよ」と頷きながら読んでくださる方が、期待以上に多かったことは嬉しい驚きでした。当日掲示したパネル等は、当会のHP(http://www.fosterforum.jp/)からご覧いただけます。
◆このフェスタにご協力いただいた大江英樹さんの最新本「その損の9割は避けられる:後悔しない“選択”ができる行動経済学」(三笠書房)が、紀伊国屋新宿南口店の週間ランキングで堂々1位になったとのこと。おめでとうございます。大江さんの益々のご活躍を応援しております。 (担当者:永沢裕美子)
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