今回は、2025年4月から7月にかけてフォスター・フォーラムの一員として参加した3つの会議体の報告の他、理事メンバー個人の活動の一部をご紹介しています。
- スタートアップ企業等への成長資金供給等に関する懇談会報告―未上場株の原則勧誘禁止の見直し
今年1月から7月末にかけて7回開催され、世話人の永沢裕美子が個人投資家・消費者側の委員として出席しました。
昨年6月に政府が公表した「規制改革実施計画」に「非上場株式の発行・流通の活性化」が掲げられたことを受けて、金融庁と日本証券業協会(以下、日証協)が設置した会議体です。
多くの論点について議論されましたが、ここでは、現在、日証協の会員証券会社は、一般の個人投資家には未上場株(未公開株)の販売勧誘を原則禁止としていますが、この自主規制の見直しが行われることになったことをお伝えしたいと思います。
そもそも証券界がこのような自主規制を入れることになった背景ですが、2000年代半ばに未公開株をめぐるトラブルが全国的に多発し社会問題となったことを覚えておられるでしょうか。
その被害の大半が無登録業者による未公開株の取得を騙った詐欺であり、証券会社も被害者であったわけですが、未公開株詐欺を封じるために証券界が採った策が「原則勧誘禁止」という禁じ手だったわけです。
近年、特殊詐欺が多発する中で、未公開株詐欺が比較的少ない状況にありますが、これは、消費者啓発・相談の現場で「未公開株を勧誘されたら詐欺だと思え」とお伝えすることができたことによるところが大きく、その点でも「原則勧誘禁止」は非常に実効的であったと評価しています。
その一方で、「禁止」という方法は、自由を大事にする市場経済において必ずしも最善の策とは言えないという声があることも確かです。
また、見直しが俎上に上がった背景として、この自主規制があるために、証券会社がスタートアップ企業の資金調達において消極的になっている可能性があるという指摘があったためとも伝えられていました。
本懇談会ではさまざまな意見が出ていましたが、「原則勧誘禁止」を見直す場合は、非上場株式の勧誘や取引を適切に行うことができる態勢が整備できている証券会社に限って解禁してほしいこと、そして、日証協等がそのような態勢整備ができている証券会社のリストを公表し、投資家自身も自ら警戒できる環境の整備を行なってほしいと要望しました。
各回の資料と議事録は日証協のこちらのページに公開されています。
第2回のスタートアップ関係者(発行者、市場仲介者、ファンド)の発表資料や第3回の野村総研による海外調査報告は参考になると思います。
また、確定版はまだアップされていませんが、最終回(7月31日)段階の報告書(案)はこちらからお読みいただけます。
2. 金融審議会・暗号資産制度に関するワーキンググループ報告
加藤金融担当大臣からの「国内外の投資家において暗号資産が投資対象と位置づけられる状況が生じていることを踏まえ、利用者保護とイノベーション促進の双方に配意しつつ、暗号資産を巡る制度のあり方について検討を行うこと」との諮問を受けて金融審議会に設置されたワーキンググループです。世話人の永沢が委員として出席をすることになり、7月31日に第1回が開催されました。
このワーキンググループの設置に先立ち、金融庁は今年4月に外部有識者を集めて「暗号資産に関連する制度のあり方等の検証 ディスカッション・ペーパー」を取りまとめて公表しています。
このペーパーについて意見募集が行われ、私たちフォスター・フォーラムからは、金融サービス利用者の立場から、「暗号資産は価値の裏付けがなく、国民の資産形成のための金融商品として位置付けられることには強い違和感がある。しかしながら、S N S等を通じた暗号資産に関する投資詐欺が多発している現状に鑑み、暗号資産に関する投資勧誘を取り締まるための法整備は急務であり、暗号資産を金融商品取引法の規制対象とする方向性には賛成」という主旨の意見を提出しました。
暗号資産については、昨年暮れに決定された2025年度与党税制改正大綱で「暗号資産を国民の資産形成に資する金融商品として位置づけ、その見直しを検討する」と明記されています。
現状の最大55%の総合課税が、近い将来、金融商品と同じ約20%の分離課税へと移行することになります。さらに投機熱が高まることが懸念されます。
前掲のディスカッション・ペーパーによると、投資経験者の7%が暗号資産の取引をしたことがあると回答、この比率はF X取引や債券よりも高い水準となっていることに非常に驚きました。
暗号資産は生まれてまだ10年です。
国民の資産形成に資する金融商品となりうるのか、そのことがわかるにはまだまだ相当の時間がかかるように思います。
フォスター・フォーラムとしては、家計の資産形成に資する良質な金融商品を育てるという立場から、このワーキンググループでの審議だけでなく、その後の国会での審議も注視し、報告をしていきたいと思っています。
3. 第22回金融経済教育推進会議報告
国民の金融リテラシーの向上という目標実現のために、2013年6月に金融広報中央委員会に設置、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の設立に伴い、同機構に移管された会議体です。
さる6月30日に通算第22回、J-FLECとなってからは初めての推進会議が開催されました。
運営方法の見直しやJ-FLECの活動状況の報告の他に、3つの民間企業による取り組み事例の紹介が行われました。
当日の資料と議事録はこちらのページに公表されています。
新しい取り組みである認定アドバイザーについては、当初は0人の県がありましたが、すべての都道府県で認定することができたことや、無料相談の利用状況についても、中立的な相談を利用できてよかったという声が寄せられるなど、地味なスタートながらも、狙い通りの利用状況であること等が報告されていました。
民間企業によるプレゼンはどれも興味深いものでしたが、おきなわフィナンシャルグループによる、貧困の世代間連鎖を防ぐために地域社会全体で金融経済教育に取り組んでいるというプレゼンには、金融経済教育の実践を通じて産官学が連携して地域の社会課題に取り組んでいる素晴らしい事例で、感銘を受けました。3企業によるプレゼンはこちらから。
4. メンバーの活動紹介
理事の大江加代が理事をしている特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会では
企業型DCの制度運営を社員目線で熱心に取り組んでいる企業を「DCエクセレントカンパニー」として認定、表彰し、応援する活動を行っています。
今年のDCエクセレントカンパニー優秀賞受賞企業6社はこちらです。
従業員数が100名足らずの運送会社も入っています。
理事の川元由喜子が雑誌「ジャパニーズインベスター」4月26日号の連載コーナー「賢明なる投資家とは」に「なぜ、長期投資せよと言われるのか」と題する記事を寄稿しました。
理事の坂本綾子が「マンガと図解でよくわかるーきみたちはどう稼ぐかー一杯のコーヒーをお金に変える方法」を出版しました。
子どもにとってお金との付き合いは、おこづかいやお年玉をもらってお金を使うことから始まります。働いて自分でお金を稼ぐのはまだ先のことです。
この本は、大人になったら自分でお金を稼ぐことが出発点だと伝えたくて、「小学生が家庭内起業でコーヒー屋さんを始める」ストーリーを使って、お金を稼ぐことを疑似体験できるよう、工夫されています。
疑似体験を通して、お金と自分、さらに社会との関係、稼いだお金の使い方などを考える内容にもなっています。
若手イラストレーターのみずみずしいマンガと、図版を使った解説で、読みやすい構成です。
子どもはもちろん、大人が子どもにお金の話をするときにも使っていただければと思います。
理事の島義夫と世話人の永沢裕美子が9月26日夜に開催される昭和女子大学専門職大学院公開シンポジウム「金融経済教育の方向性〜ジェンダー、ジェネレーション、キャズム」に、同大学院教授の太田行信氏、J―F L E C理事の大友佳子氏とともに登壇します。
なお、キャズムとは、「大きな溝」や「裂け目」と直訳されますが、新しい製品や技術が社会に広く浸透する前に突き当たる大きな壁を意味するマーケティング用語です。主催者によれば、金融リテラシー向上と投資を活用した資産形成の普及をこれまで阻んできた背景についても考えようという趣旨で副題に入れてみたとのことです。
・開催日時:9月26日(金)18時半〜20時半
・開催場所:昭和女子大学コスモスホール及びZoomウェビナー
・参加費:無料
シンポジウムの詳細とお申し込みはこちらから
世話人の永沢裕美子が理事を務める消費者団体NACSで制作した小冊子「20代、30代のあなたに読んでほしい お金の話〜人生、お金でつまずかないために」が消費者教育支援センターの消費者教育教材表彰で優秀賞を受賞しました。
世話人の永沢裕美子が合同会社フィンウェル研究所代表の野尻哲史氏と東京都産業労働局の「50歳から考えるライフ×お金 東京MONEY BOOK」制作に協力しました。
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発行元/フォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)