金商法及び保険業法の改正法案の審議が、5月9日に衆議院の財政金融委員会で、5月20日に参議院の財政金融委員会で行われました。
衆議院の財政金融委員会では、8名の委員のうち7名が投資型クラウドファンディングについて質問や意見を述べ、続く参議院の委員会では8名中4名の委員が取り上げていました。
それぞれの委員会の議事録は下記ページからお読みいただけます。
[衆議院]
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009518620140509011.htm
[参議院]
http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0105/main.html
以下は、投資型クラウドファンディングに関する質問部分の抜粋(一部筆者が要約)です。議事録全文をお読みになる前に参考にしていただけると幸いです。
★ 5月9日 衆議院財政金融委員会
小倉将信委員(自民党)
クラウドファンディングを拡充し、個人投資家から新しい企業に成長マネーを還流させることも重要だが、限界があるのでは。米国では、ベンチャー企業の出口はIPOではなくM&Aが主流。大企業からBtoBで成長マネーを還流させるため、日本でも積極的にM&Aが活用されるよう境整備を行うべきではないか。
岡本三成委員(公明党)
今回の解禁の目的と、活用に関してどのような予想をしているのか。
政府は、クラウドファンディングを通じてマッチングされた企業の最も可能性の高い5年後、10年後の姿をどのように予想しているのか。
成長企業は多分に配当が行われないため、投下資金の回収の見込みは低く、ハイリスク・ローリターンの投資であると私は思うが、だからこそ、情報を徹底的に開示し、投資家には分かった上で投資をしてもらうことが重要となると思う。まず、資金調達前の情報開示についてだが、プロのベンチャーキャピタリストは出資を決める際に経営者と徹底的に面談できるが、クラウドファンディングでは、経営者を吟味する手法が担保されていないという問題がある。提案型の質問になるが、仲介者のHPに経営者の略歴を詳細に載せたり、HP上で動画で経営者に語らせる等のことをさせてはどうか。
資金調達後の情報開示について、プロの投資家なら議決権を有効に活用しながら、必要な情報開示を経営者に求めることが可能だが、クラウドファンディングの投資家はそういうことができないという問題があるのではないか。発行者側には財務諸表の開示以外に、当初のビジネスプランに対して定期的に今どういう状況にあるのか、うまくいっていなければどのように改善していくのかということを報告させることを求めるべきと思うが、いかがか。
2月に意見書を提出した消費者委員会へ質問。今回のクラウドファンディング解禁法案を全般的にどう評価しているか。意見書で発行者や仲介業者が正確は情報開示を怠った場合には行政罰、刑事罰、損害賠償責任を盛り込むように要求していたが、それが見送られたことについて、どう感じているか。
鷲尾英一郎委員(民主党)
クラウドファンディングの取扱業者(仲介業者)に発行者の事業内容のチェック等を義務づけているが、機能するのか。
目標金額を上回る応募があった場合、超過額については、応募してきた投資家に返還させるのか、取扱業者に委ねるのか。(金融庁は、原則返還と答弁)
自主規制機関に未加入の事業者には自主規制並みの社内規則の作成等が義務づけられるということだが、それで実効性があがるのか。
坂本大輔委員(日本維新の会)
株式形態の投資型クラウドファンディングを利用して未公開企業が資金調達を行う場合、一億円と仮定した場合、最低200人程度の株主が生まれることになる。株主の管理コストがかかるため、新規参入を躊躇する事業者も出てくるのではないか。できるかぎりの負担軽減が必要と思うが、金融庁の見解は。
海外の悪質な事業者または詐欺グループに利用された場合、送金をしてしまうと被害の回復が大変難しくなってくるのではないか。投資家への注意喚起とともに、海外当局との連携が課題となってくると思うが、金融庁の見解は。
これまでは投資会社なり証券会社なりのプロがチェックをしてきたが、クラウドファンディングでは投資家個人がチェックをしなくてはいけないという状況になるのでは。ウエブサイト上にどういった情報の表示の仕方をするのかが大変大事になるが、金融庁の見解は。
仲介者のウエブサイト上に寄付型、購入型、投資型のコンテンツが併存して表示される場合も考えられるが、利用者の誤解を招きかねないと懸念している。利用者の誤認を招かない表示の徹底について金融庁はどう考えているか。
プロのチェックが行き届かない中で、投資先の未公開企業と反社会的勢力との関わりがないことを、個人の投資家がウエブサイトでチェックできるのか。
仲介業者が独自にチェックを行っていくのは難しいのでは。業界のプロを仲介業者の中に確保するとか、人的な面での手当てが必要となると思う。仲介者に対して体制整備を求めていくということに加えて、発行者にも重要な事実の不開示や虚偽開示があった場合は厳しく責任を問う仕組みを作るべきと思うが、どうか。
大隈利昭委員(みんなの党)
NPO等への寄付をうたったクラウドファンディング的なサービスをやっている業者のサイトを見ると、金商法の業者の登録番号が表示されていないが、金商法の対象外なのか。
本当は投資なのだが寄付型というふうにしてしまうと抜け道になってしまうのではないか。例えば、投資家への説明は、実はリターンがあるんですよ、でも形式は寄付なんですということは起こりえないか。どっちなのかわからないケースがインターネット等で見ると散見できるので、その点、しっかりと、現実に起っていることを把握してほしい。
(投資型のクラウドファンディングを通じて資金調達をする企業については、財務諸表は、その仲介業者のウエブサイト上での情報提供の対象とはしない予定であるというと答弁を受けて) 投資を判断するのに財務諸表がなくて、どうやって投資を判断するのか。
(仲介業者のウエブサイト上には、事業計画や資金使途は掲載されることが予定されているという答弁を受けて)事業計画が出てきても、最初の出発点のBSがなくて、一体どういう事業計画なんだと思う。その辺りどう考えるのか。
規制緩和の党であり、規制は余りよろしくないと言っているが、この点(情報開示)については、やはりしっかりやった方がいい。ベンチャーといっても企業なのだから、投資家を広く募集しようというわけだから、(経営者には)数字のところをしっかりやらなくてはいけないという認識を持たせるような、そういった行政にしていただきたいと思う。
ベンチャーとはいえ、BSやPLを作ることが何も追加的な負担になるわけではない。開示するかしないかの問題。そこのところは区別してお願いしたい。
仲介者について、株式の引受ということが想定されているのか。(されていないという答弁)そうであるなら、自分が懸念していたコミングルリスクはないと理解した。
投資型クラウドファンディングを通じてどのくらいの調達がなされると予想されているのか。(既存の第二種の業者によるファンド形態の投資型クラウドファンディングの募集取扱い実績が、ここ3年を平均して、年間5億円程度という答弁を受けて)この5億円がどのくらいになりそうだという数字は持っているのか。モニタリングについては、今後は監督官庁としてできるという理解でよろしいか。
佐々木憲昭委員(共産党)
公開株と未公開株、基本的な違いはどこにあるのか。(未公開株に場合は、取引を行う市場が存在しないという答弁を受けて)未公開株は一般消費者には判断が難しいのではないか。詐欺的な行為によって被害を受けるというケースが増えている。プロ向けのファンド業者の関係の未公開株を購入して損をしたとか、そういう関係の相談が増加している。2012年度は1518件と、3年前の約10倍になっている。契約当事者も60歳以上の高齢者が9割を占めている。この相談が急増していることについて、大臣はどうお考えか。
法案のスキをついて、悪質な業者あるいは詐欺グループが仲介者として参入したり、発行者として制度を悪用したり、仲介者、発行者それぞれの役割を分担して被害を及ぼすことも考えられる。ウエブサイト上に虚偽の事業内容、事業計画を掲げて資金を集めるというやり方が典型だと思うが、これに対する防止の手立てをどう考えているのか。
何を開示させるのか、何をチェックするのか、具体的な内容がまだ不明確。これから政省令とか内閣府令で詳細を定めていくという話だが、業者任せだ。適切な規制になっていない。
投資家に対して虚偽の情報提供をした場合の民事責任について、上場株式等における情報開示については、現在、事業者に対して無過失責任を課すという規定があるが、今度の法案には、事業者及び仲介業者に対して立証責任を課す規定はあるか。(この質問に対して、金融庁からは、クラウドファンディングについては特別の規定を設けておらず、投資家は民法の不法行為責任の一般原則に基づいて損害賠償請求を行うことになるというと答弁があったのを受けて)この法案は、投資家保護と証券市場の公正、こういう金商法の本来の目的から外れていると思う。
イギリスでは、(クラウドファンディングを通じて行われた)投資対象企業の50%から70%が倒産している。イギリスの金融行為規制機構であるFCAが、未公開株への投資は非常に危険である旨を繰り返し消費者に訴えかけている。その内容は、誰もが買えるような類の金融商品ではないこと、多くのクラウドファンディングが破綻していること、投資資金がゼロになる可能性が極めて高いこと、こういうことを挙げて注意を呼びかけている。そして、捨ててもよいお金以外は投資するな、ほとんどの起業ビジネスが破綻しているという事実を知れ、こういう警告をしているということは事実か。(英国当局が2012年8月に公表した文書であると承知している等 という答弁を受けて) 現在、未公開株の勧誘は、リスクが高いため、原則禁止である。苦情、被害が急増している中で、規制を緩和することになると、ますます事態を深刻にさせることにならないか。
リスクマネーの供給を確保したいということはそれなりの理由があるとは思うが、今の状況の中で、未公開株の売買を進めていくということになると、危険性を拡大すると言わざるをえない。投資家保護の具体的な対応を強化するという話になっていない。
鈴木克昌委員(生活の党)
投資家保護に関するメニューが極端に少ないんではないか。
本法案では参入規制を緩和するということになっているが、より規制の緩い第二種金商業者、いわゆるファンド形態のクラウドファンディング業者の新規参入の増加が見込まれる。現制度の中でも規制が厳しくない、検査も余り入らないような第二種金商業者について(参入の規制を?)導入するという制度であり、きちっとした監督ができるのか、その実効性があるのか、答弁いただきたい。
(今回の法案では、体制が整備されていないと認められる者については登録を拒否することになっていることや、第二種金商業者であるクラウドファンデフィング業者については、登録申請時の確認をより厳格に行うとともに、登録後も検査監督を万全に期していきたい という答弁を受けて) そこのところが本当に大丈夫なのか、広げたいという思いの方が強くて、投資家保護とか規制に対する甘さが出てきてしまうのではないかということを懸念している。そんなことのないよう、実効性のある監督を監督官庁にやっていただきたい。
原案のまま可決されたが、自民党、民主党、無所属クラブ、公明党の共同提案により附帯決議が付された。その中で投資型クラウドファンディングに関する部分を抜粋すると、以下の通り。
一 いわゆる投資型クラウドファンディングについては、新規・成長企業への適切な資金の流れを確保し、制度に対する投資者の信頼を確保するとともに、悪質業者による資金集めの場となることを防止するため、投資型クラウドファンディング業者による、発行者に対する財務状況・事業計画の内容・資金使途等の適切な確認等のデューデリジェンス及びインターネットを通じた適切な情報提供等のための体制整備について適確に監督を行うとともに、必要な定員・機構の確保を図ること。また、資金受入れ後の事業等の状況等についても、投資者に対する適時適切な情報提供が確保されるよう配意すること。
一 投資者が、新規・成長企業への投資に関するリスク等を十分に把握できないことにより不測の損害を被ることのないよう、投資者に対する注意喚起及び理解啓発に努めるとともに、投資被害の多くが電話・訪問によるものであることを踏まえ、投資型クラウドファンディングにおいては、電話・訪問を用いた勧誘ができないことを明確化すること。
一 無登録業者による未公開株やファンドによる被害が後を絶たないことに鑑み、国内・海外を問わず、投資型クラウドファンディングを含め、無登録業者に対する監視等を強化すること。
★ 5月20日 参議院財政金融委員会
石田昌宏委員(自民党)
今回のクラウドファンディングなど見ていても、どちらかというと成り済ましの防止とか不正の防止という観点が非常にあるが、不安を解消して投資したいという思いで制度を考えていくことはとても重要ではないか。
尾立源幸委員(民主党・新緑風会)
ネットのみを介して行うという点では、詐欺などの舞台に使われる可能性が懸念される。業者に対するしっかりとした監督が必要だが、どのように監督する予定か。
この取組は一つの試行錯誤の一環として方向性としてはいいと思うが、非常にリスクも含まれている。インターネットの世界では、無登録業者、違法な業者、さらには国内の業者ではなく海外の無登録業者がこの制度を使って違法な資金集めをするのではないかという懸念も持っている。ネットの世界は、登録されているかどうか、違法かどうかというのはなかなか見分けるのは難しいので、その辺りは投資家から見て非常に分かりやすいようにまず設計してもらいたいし、違法な者がいたら即ネットの世界で処分が、措置ができるような仕組みをつくってもらいたい。
弁護士会からも幾つか懸念事項が指摘をされている。違法な業者の取締りの問題、そしてさらには発行者、お金を集めたいと思っている会社に対するデューデリジェンス、財務状況の調査等々をしっかりやらないと、いいかげんな会社の資金集めに加担をしてしまうということにもなりかねないので、そういうところにもしっかり目を配っていただきたい。
さらに、そういった情報をインターネットで適時に開示をしていただきたいし、さらに、投資して終わりではなく、その企業が当然成長していかなければならない。資金受入れ後の経営状況についてもインターネットでしっかり投資家に情報が行き渡るようなことも是非考えていただきたい。
詐欺の舞台に是非使われないように、そういう細心の注意を持ってやっていただかないと、我々も法律を認めた責任がある。しっかりそこはやっていただきたい。
中山恭子(日本維新の会・結いの党)
クラウドファンディングについて、注意深く動かす必要はあると思うが、地方の活性化のために大いに役立つものであると考えているので、この辺り含めて意見を伺いたい。(時間切れで答弁なし)
平野達男委員(無所属)
投資家という立場に立った場合に、今回のクラウドファンディングという言葉自体もなじみがない。制度設計の段階で、投資者や一般人が何を気を付けるべきかという観点から情報発信をしていくべきではないか。現段階で金融庁はどんな観点で整理されているのか。
参議院の委員会でも原案のまま可決されたが、附帯決議が付された。投資型クラウドファンディングに関する部分を抜粋すると、以下の通り。
一 新規・成長企業に対するリスクマネーの供給が円滑に行われるためには、金融資本市場に対する投資者の信頼感の確保が必要であることに鑑み、投資型クラウドファンディングに係る制度の運用に当たっては、詐欺的な行為に悪用されることを防ぐため、仲介者となる業者による、発行者に対するデューデリジェンス及びインターネットを通じた情報提供が適切に行われるよう適確な監督を行うとともに、必要な定員・機構の確保を図ること。また、資金受入れ後の企業の事業状況等についても、適時適切に情報提供されるよう配慮するとともに勧誘ルールを明確化するなど、投資者に対する注意喚起及び理解啓発に努めるほか、自主規制機関などの関係者との連携強化を図りつつ、投資者保護の確保に万全を期すこと。
一 ファンドを販売する金融商品取引業者等における問題事案の再発を防止するため、自主規制機関と連携しつつ、本法による行為規制の強化等を厳正に運用するとともに、実効性ある投資者保護に資する対策を引き続き検討すること。その際、自主規制機関における加入促進に向けた取組についても配慮すること。
また、無登録業者による未公開株やファンドの勧誘をめぐる被害が後を絶たないことに鑑み、国内・海外を問わず、無登録業者に対する監視等を強化すること。
(報告者:永沢裕美子)
金商法及び保険業法の改正法案の審議が、5月9日に衆議院の財政金融委員会で、5月20日に参議院の財政金融委員会で行われました。
衆議院の財政金融委員会では、8名の委員のうち7名が投資型クラウドファンディングについて質問や意見を述べ、続く参議院の委員会では8名中4名の委員が取り上げていました。
それぞれの委員会の議事録は下記ページからお読みいただけます。
[衆議院]
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009518620140509011.htm
[参議院]
http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0105/main.html
以下は、投資型クラウドファンディングに関する質問部分の抜粋(一部筆者が要約)です。議事録全文をお読みになる前に参考にしていただけると幸いです。
★ 5月9日 衆議院財政金融委員会
小倉将信委員(自民党)
クラウドファンディングを拡充し、個人投資家から新しい企業に成長マネーを還流させることも重要だが、限界があるのでは。米国では、ベンチャー企業の出口はIPOではなくM&Aが主流。大企業からBtoBで成長マネーを還流させるため、日本でも積極的にM&Aが活用されるよう境整備を行うべきではないか。
岡本三成委員(公明党)
今回の解禁の目的と、活用に関してどのような予想をしているのか。
政府は、クラウドファンディングを通じてマッチングされた企業の最も可能性の高い5年後、10年後の姿をどのように予想しているのか。
成長企業は多分に配当が行われないため、投下資金の回収の見込みは低く、ハイリスク・ローリターンの投資であると私は思うが、だからこそ、情報を徹底的に開示し、投資家には分かった上で投資をしてもらうことが重要となると思う。まず、資金調達前の情報開示についてだが、プロのベンチャーキャピタリストは出資を決める際に経営者と徹底的に面談できるが、クラウドファンディングでは、経営者を吟味する手法が担保されていないという問題がある。提案型の質問になるが、仲介者のHPに経営者の略歴を詳細に載せたり、HP上で動画で経営者に語らせる等のことをさせてはどうか。
資金調達後の情報開示について、プロの投資家なら議決権を有効に活用しながら、必要な情報開示を経営者に求めることが可能だが、クラウドファンディングの投資家はそういうことができないという問題があるのではないか。発行者側には財務諸表の開示以外に、当初のビジネスプランに対して定期的に今どういう状況にあるのか、うまくいっていなければどのように改善していくのかということを報告させることを求めるべきと思うが、いかがか。
2月に意見書を提出した消費者委員会へ質問。今回のクラウドファンディング解禁法案を全般的にどう評価しているか。意見書で発行者や仲介業者が正確は情報開示を怠った場合には行政罰、刑事罰、損害賠償責任を盛り込むように要求していたが、それが見送られたことについて、どう感じているか。
鷲尾英一郎委員(民主党)
クラウドファンディングの取扱業者(仲介業者)に発行者の事業内容のチェック等を義務づけているが、機能するのか。
目標金額を上回る応募があった場合、超過額については、応募してきた投資家に返還させるのか、取扱業者に委ねるのか。(金融庁は、原則返還と答弁)
自主規制機関に未加入の事業者には自主規制並みの社内規則の作成等が義務づけられるということだが、それで実効性があがるのか。
坂本大輔委員(日本維新の会)
株式形態の投資型クラウドファンディングを利用して未公開企業が資金調達を行う場合、一億円と仮定した場合、最低200人程度の株主が生まれることになる。株主の管理コストがかかるため、新規参入を躊躇する事業者も出てくるのではないか。できるかぎりの負担軽減が必要と思うが、金融庁の見解は。
海外の悪質な事業者または詐欺グループに利用された場合、送金をしてしまうと被害の回復が大変難しくなってくるのではないか。投資家への注意喚起とともに、海外当局との連携が課題となってくると思うが、金融庁の見解は。
これまでは投資会社なり証券会社なりのプロがチェックをしてきたが、クラウドファンディングでは投資家個人がチェックをしなくてはいけないという状況になるのでは。ウエブサイト上にどういった情報の表示の仕方をするのかが大変大事になるが、金融庁の見解は。
仲介者のウエブサイト上に寄付型、購入型、投資型のコンテンツが併存して表示される場合も考えられるが、利用者の誤解を招きかねないと懸念している。利用者の誤認を招かない表示の徹底について金融庁はどう考えているか。
プロのチェックが行き届かない中で、投資先の未公開企業と反社会的勢力との関わりがないことを、個人の投資家がウエブサイトでチェックできるのか。
仲介業者が独自にチェックを行っていくのは難しいのでは。業界のプロを仲介業者の中に確保するとか、人的な面での手当てが必要となると思う。仲介者に対して体制整備を求めていくということに加えて、発行者にも重要な事実の不開示や虚偽開示があった場合は厳しく責任を問う仕組みを作るべきと思うが、どうか。
大隈利昭委員(みんなの党)
NPO等への寄付をうたったクラウドファンディング的なサービスをやっている業者のサイトを見ると、金商法の業者の登録番号が表示されていないが、金商法の対象外なのか。
本当は投資なのだが寄付型というふうにしてしまうと抜け道になってしまうのではないか。例えば、投資家への説明は、実はリターンがあるんですよ、でも形式は寄付なんですということは起こりえないか。どっちなのかわからないケースがインターネット等で見ると散見できるので、その点、しっかりと、現実に起っていることを把握してほしい。
(投資型のクラウドファンディングを通じて資金調達をする企業については、財務諸表は、その仲介業者のウエブサイト上での情報提供の対象とはしない予定であるというと答弁を受けて) 投資を判断するのに財務諸表がなくて、どうやって投資を判断するのか。
(仲介業者のウエブサイト上には、事業計画や資金使途は掲載されることが予定されているという答弁を受けて)事業計画が出てきても、最初の出発点のBSがなくて、一体どういう事業計画なんだと思う。その辺りどう考えるのか。
規制緩和の党であり、規制は余りよろしくないと言っているが、この点(情報開示)については、やはりしっかりやった方がいい。ベンチャーといっても企業なのだから、投資家を広く募集しようというわけだから、(経営者には)数字のところをしっかりやらなくてはいけないという認識を持たせるような、そういった行政にしていただきたいと思う。
ベンチャーとはいえ、BSやPLを作ることが何も追加的な負担になるわけではない。開示するかしないかの問題。そこのところは区別してお願いしたい。
仲介者について、株式の引受ということが想定されているのか。(されていないという答弁)そうであるなら、自分が懸念していたコミングルリスクはないと理解した。
投資型クラウドファンディングを通じてどのくらいの調達がなされると予想されているのか。(既存の第二種の業者によるファンド形態の投資型クラウドファンディングの募集取扱い実績が、ここ3年を平均して、年間5億円程度という答弁を受けて)この5億円がどのくらいになりそうだという数字は持っているのか。モニタリングについては、今後は監督官庁としてできるという理解でよろしいか。
佐々木憲昭委員(共産党)
公開株と未公開株、基本的な違いはどこにあるのか。(未公開株に場合は、取引を行う市場が存在しないという答弁を受けて)未公開株は一般消費者には判断が難しいのではないか。詐欺的な行為によって被害を受けるというケースが増えている。プロ向けのファンド業者の関係の未公開株を購入して損をしたとか、そういう関係の相談が増加している。2012年度は1518件と、3年前の約10倍になっている。契約当事者も60歳以上の高齢者が9割を占めている。この相談が急増していることについて、大臣はどうお考えか。
法案のスキをついて、悪質な業者あるいは詐欺グループが仲介者として参入したり、発行者として制度を悪用したり、仲介者、発行者それぞれの役割を分担して被害を及ぼすことも考えられる。ウエブサイト上に虚偽の事業内容、事業計画を掲げて資金を集めるというやり方が典型だと思うが、これに対する防止の手立てをどう考えているのか。
何を開示させるのか、何をチェックするのか、具体的な内容がまだ不明確。これから政省令とか内閣府令で詳細を定めていくという話だが、業者任せだ。適切な規制になっていない。
投資家に対して虚偽の情報提供をした場合の民事責任について、上場株式等における情報開示については、現在、事業者に対して無過失責任を課すという規定があるが、今度の法案には、事業者及び仲介業者に対して立証責任を課す規定はあるか。(この質問に対して、金融庁からは、クラウドファンディングについては特別の規定を設けておらず、投資家は民法の不法行為責任の一般原則に基づいて損害賠償請求を行うことになるというと答弁があったのを受けて)この法案は、投資家保護と証券市場の公正、こういう金商法の本来の目的から外れていると思う。
イギリスでは、(クラウドファンディングを通じて行われた)投資対象企業の50%から70%が倒産している。イギリスの金融行為規制機構であるFCAが、未公開株への投資は非常に危険である旨を繰り返し消費者に訴えかけている。その内容は、誰もが買えるような類の金融商品ではないこと、多くのクラウドファンディングが破綻していること、投資資金がゼロになる可能性が極めて高いこと、こういうことを挙げて注意を呼びかけている。そして、捨ててもよいお金以外は投資するな、ほとんどの起業ビジネスが破綻しているという事実を知れ、こういう警告をしているということは事実か。(英国当局が2012年8月に公表した文書であると承知している等 という答弁を受けて) 現在、未公開株の勧誘は、リスクが高いため、原則禁止である。苦情、被害が急増している中で、規制を緩和することになると、ますます事態を深刻にさせることにならないか。
リスクマネーの供給を確保したいということはそれなりの理由があるとは思うが、今の状況の中で、未公開株の売買を進めていくということになると、危険性を拡大すると言わざるをえない。投資家保護の具体的な対応を強化するという話になっていない。
鈴木克昌委員(生活の党)
投資家保護に関するメニューが極端に少ないんではないか。
本法案では参入規制を緩和するということになっているが、より規制の緩い第二種金商業者、いわゆるファンド形態のクラウドファンディング業者の新規参入の増加が見込まれる。現制度の中でも規制が厳しくない、検査も余り入らないような第二種金商業者について(参入の規制を?)導入するという制度であり、きちっとした監督ができるのか、その実効性があるのか、答弁いただきたい。
(今回の法案では、体制が整備されていないと認められる者については登録を拒否することになっていることや、第二種金商業者であるクラウドファンデフィング業者については、登録申請時の確認をより厳格に行うとともに、登録後も検査監督を万全に期していきたい という答弁を受けて) そこのところが本当に大丈夫なのか、広げたいという思いの方が強くて、投資家保護とか規制に対する甘さが出てきてしまうのではないかということを懸念している。そんなことのないよう、実効性のある監督を監督官庁にやっていただきたい。
原案のまま可決されたが、自民党、民主党、無所属クラブ、公明党の共同提案により附帯決議が付された。その中で投資型クラウドファンディングに関する部分を抜粋すると、以下の通り。
一 いわゆる投資型クラウドファンディングについては、新規・成長企業への適切な資金の流れを確保し、制度に対する投資者の信頼を確保するとともに、悪質業者による資金集めの場となることを防止するため、投資型クラウドファンディング業者による、発行者に対する財務状況・事業計画の内容・資金使途等の適切な確認等のデューデリジェンス及びインターネットを通じた適切な情報提供等のための体制整備について適確に監督を行うとともに、必要な定員・機構の確保を図ること。また、資金受入れ後の事業等の状況等についても、投資者に対する適時適切な情報提供が確保されるよう配意すること。
一 投資者が、新規・成長企業への投資に関するリスク等を十分に把握できないことにより不測の損害を被ることのないよう、投資者に対する注意喚起及び理解啓発に努めるとともに、投資被害の多くが電話・訪問によるものであることを踏まえ、投資型クラウドファンディングにおいては、電話・訪問を用いた勧誘ができないことを明確化すること。
一 無登録業者による未公開株やファンドによる被害が後を絶たないことに鑑み、国内・海外を問わず、投資型クラウドファンディングを含め、無登録業者に対する監視等を強化すること。
★ 5月20日 参議院財政金融委員会
石田昌宏委員(自民党)
今回のクラウドファンディングなど見ていても、どちらかというと成り済ましの防止とか不正の防止という観点が非常にあるが、不安を解消して投資したいという思いで制度を考えていくことはとても重要ではないか。
尾立源幸委員(民主党・新緑風会)
ネットのみを介して行うという点では、詐欺などの舞台に使われる可能性が懸念される。業者に対するしっかりとした監督が必要だが、どのように監督する予定か。
この取組は一つの試行錯誤の一環として方向性としてはいいと思うが、非常にリスクも含まれている。インターネットの世界では、無登録業者、違法な業者、さらには国内の業者ではなく海外の無登録業者がこの制度を使って違法な資金集めをするのではないかという懸念も持っている。ネットの世界は、登録されているかどうか、違法かどうかというのはなかなか見分けるのは難しいので、その辺りは投資家から見て非常に分かりやすいようにまず設計してもらいたいし、違法な者がいたら即ネットの世界で処分が、措置ができるような仕組みをつくってもらいたい。
弁護士会からも幾つか懸念事項が指摘をされている。違法な業者の取締りの問題、そしてさらには発行者、お金を集めたいと思っている会社に対するデューデリジェンス、財務状況の調査等々をしっかりやらないと、いいかげんな会社の資金集めに加担をしてしまうということにもなりかねないので、そういうところにもしっかり目を配っていただきたい。
さらに、そういった情報をインターネットで適時に開示をしていただきたいし、さらに、投資して終わりではなく、その企業が当然成長していかなければならない。資金受入れ後の経営状況についてもインターネットでしっかり投資家に情報が行き渡るようなことも是非考えていただきたい。
詐欺の舞台に是非使われないように、そういう細心の注意を持ってやっていただかないと、我々も法律を認めた責任がある。しっかりそこはやっていただきたい。
中山恭子(日本維新の会・結いの党)
クラウドファンディングについて、注意深く動かす必要はあると思うが、地方の活性化のために大いに役立つものであると考えているので、この辺り含めて意見を伺いたい。(時間切れで答弁なし)
平野達男委員(無所属)
投資家という立場に立った場合に、今回のクラウドファンディングという言葉自体もなじみがない。制度設計の段階で、投資者や一般人が何を気を付けるべきかという観点から情報発信をしていくべきではないか。現段階で金融庁はどんな観点で整理されているのか。
参議院の委員会でも原案のまま可決されたが、附帯決議が付された。投資型クラウドファンディングに関する部分を抜粋すると、以下の通り。
一 新規・成長企業に対するリスクマネーの供給が円滑に行われるためには、金融資本市場に対する投資者の信頼感の確保が必要であることに鑑み、投資型クラウドファンディングに係る制度の運用に当たっては、詐欺的な行為に悪用されることを防ぐため、仲介者となる業者による、発行者に対するデューデリジェンス及びインターネットを通じた情報提供が適切に行われるよう適確な監督を行うとともに、必要な定員・機構の確保を図ること。また、資金受入れ後の企業の事業状況等についても、適時適切に情報提供されるよう配慮するとともに勧誘ルールを明確化するなど、投資者に対する注意喚起及び理解啓発に努めるほか、自主規制機関などの関係者との連携強化を図りつつ、投資者保護の確保に万全を期すこと。
一 ファンドを販売する金融商品取引業者等における問題事案の再発を防止するため、自主規制機関と連携しつつ、本法による行為規制の強化等を厳正に運用するとともに、実効性ある投資者保護に資する対策を引き続き検討すること。その際、自主規制機関における加入促進に向けた取組についても配慮すること。
また、無登録業者による未公開株やファンドの勧誘をめぐる被害が後を絶たないことに鑑み、国内・海外を問わず、無登録業者に対する監視等を強化すること。
(報告者:永沢裕美子)