設立8年目を迎えるにあたって(2012年12月)

 

  1. 7年間を振り返って

私たちがフォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)を立ち上げてから7年が経ちました。

この間、主に投資信託に関する意見公募に対して、利用者の立場から意見や提言を提出させていただきました。詳細は当会ホームページ(http://www.fosterforum.jp)をご参照ください。

当会は純粋なボランティアで行っておりますので、その活動には自ずと限界がありますが、私たちの声が規制当局や事業者団体に届き、制度の見直し等に微力ながらも貢献できたことは、皆様の当会に対する高い関心とご支援のおかげと感謝しております。

中でも、分厚くなってしまい「読みづらい、分かりづらい」との批判の多かった投信の交付目論見書の簡素化のためのワーキングに利用者代表として参画できたことは、私たちにとっても大変貴重な経験になりました。新しくなった交付目論見書には、まだまだ改善すべき点が残っていますが、利用者が声をあげることで制度が変わるということの一つの証左となったのではないかと自負しております。

一方、この7年間の市場を振り返ってみたとき、「良質な金融商品」は育ったのかという問いに対しては忸怩たる思いがあります。私たちは、当会設立時に「良質な金融商品」の判断基準として4つの視点[1]を提示させていただきました。これらの視点から現状を見てみると、次のような残念な現実に直面せざるをえません。

第一に、複雑で分かりにくい商品が販売の主流になっているという現実です。投資の自己責任の第一歩は「分かること」であり、私たちは「商品の仕組みが理解しやすい(専門的な知識がなくても理解できる)こと」が「良質な金融商品」の基準の一つと考えています。規制緩和によって様々な商品組成が可能となる中で、デリバティブを組み込んだ仕組商品や通貨選択型投信など複雑な仕組みの商品が広く一般投資家に販売されていますが、仕組みやリスクを理解しないまま購入してしまった人と販売金融機関との間でトラブルになるケースが増えているようです。

第二に、金融機関は「顧客本位」という言葉を好んで使っていますが、商品設計や販売勧誘において必ずしも「利用者の利益」が第一に考えられていないという現実です。2000年以降、「貯蓄から投資へ」という流れの中で、証券会社だけでなく銀行や郵便局でも集団投資スキーム型の金融商品が販売されるようになっています。経営体質の強化のためにフィー・ビジネスへの転換が急がれることは理解できますが、上述のような複雑な仕組みの商品が積極的に導入され、利用者の負担するコストが、利用者に見えない形で実質的に値上げされてきています[2]

 

  1. 今後の活動について

こうした現実を前にして、私たちは、事業者や規制当局に対して、これまで以上に金融商品・サービスの利用者としての忌憚のない意見を発信していくことが必要との思いを強くしておりますが、加えて、以下のような取組みを進めていくことが必要と考えています。

一つは、仲間作りと連携です。金融商品やサービスの質の改善のためには、他の商品やサービスと同様、利用者の様々な声が事業者や規制当局に届くことが欠かせません。ところが、この分野で活動されている市民グループや消費者グループはまだまだ少ないのが実状です。そこで、同じような活動をするグループや個人を増やしていくために、情報提供や意見交換を行っていくことを考えております。具体的にこうした活動を進めていくために、①当会の活動に関心を持つグループや個人と連携するためのネットワークとして『フォスター・フォーラム・ネットワーク(通称FFネット)』を立ち上げるとともに、②定期的にメールマガジン『フォスター・フォーラムだより(通称FFだより)』を発行し、問題意識を提起しあい共有していく活動を展開していきたいと考えています。

第二は、金融消費者教育(金融経済教育と呼ぶ場合もあります。)への取組みです。利用者が合理的な選択行動をとらない市場においては、良質な商品が育たないばかりか、市場から消えてしまうことも起こりえます。この7年間の経験から、事業者や政府に改善を働きかけていくことはもちろん大切ですが、私たち利用者自身が賢い選択ができる利用者になることも必要であると考えるようになりました。すでに全国には金融分野の教育や学習活動に取り組まれている市民グループ・消費者グループが数多くあります。私たちは、そうしたグループと連携し、その活動を紹介し支援していくこと通じて、利用者による利用者のための金融消費者教育の開発・普及の一助となることができればと考えています。

  1. フォスター・フォーラムの今後の活動計画

★重点課題

  • メールマガジン『フォスター・フォーラムだより(通称FFだより)』の定期的な発行(四半期に1回程度を予定)

内容としては、①金融政策や業界動向を利用者目線で解説するコーナー、②話題の商品・サービスを斬るコーナー、③フリートーク・コーナー(メンバーが持ち回りで執筆)、④インタビューや寄稿コーナー(当会顧問を始め、応援してくださる有識者の方々に執筆をお願いする予定)等を予定しています。

  • 金融消費者教育への取組み

具体的には、①金融リテラシー確認テストの開発、実施並びに支援、②金融消費者教育プログラムの開発、③他の市民/消費者グループによる金融消費者教育の取組みを調査し紹介する等の活動を予定しています。

  • 投資信託の運用報告書の改正案を作成し関連業界団体等へ提言

  • 投信目論見書の読み方ガイド(バイヤーズ・ガイド)の改訂

  • 『フォスター・フォーラム・ネットワーク』ミーティングの開催

  • 調査・研究活動                             等

★2012年度の活動スケジュール

2011年

12月 フォスター・フォーラム年次総会(13日に開催済み)

2012年

3月     第一回フォーラム(5日を予定)

『フォスター・フォーラムだより』第1号の配信

4月 投信の目論見書の読み方ガイドの作成

5月 投信の運用報告書の改正案を投信協会に提案

6月 第二回フォーラム開催

『フォスター・フォーラムだより』第2号の配信

9月 第三回フォーラム開催

10月    『フォスター・フォーラムだより』第3号の配信

12月 フォスター・フォーラム年次総会

第一回『フォスター・フォーラム・ネットワーク』ミーティングの開催

 

  • メールマガジン『フォスター・フォーラムだより』の配信を希望される方は、当会ホームページの意見フォームからお申し込みください。

 

[1] 4つの視点とは、①商品の仕組みが分かりやすいこと、②コストが明確で適正な水準であり、それが明確に表示されていること、③受託者責任が全うされていること(利用者の利益を第一に考えて商品が設計され運営されていること)、④適合性の原則に基づいて商品が組成・提供されていること、です。私たちの考え方について詳しく知りたい方は、当会のホームページhttp://www.fosterforum.jp をご覧下さい。

[2] 日経新聞2011年1月27日朝刊によると、投資信託の利用者の負担コストの値上がりが続いており、購入手数料は8年連続、信託報酬(管理手数料)は7年連続で値上がりしているという。原因としては、複雑な仕組みの商品が増え、運用の外部委託や販売時の説明のためのコストが嵩んでいるためという。