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【フォスター・フォーラムだより】第31号をお届けします

今年はフィンテック(FinTech)が話題になりました。

金融庁でも金融審議会に決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ(以下、WG)を設置し、様々な分野の人を集めて、次世代の決済制度(規制)のあり方や、国際的に台頭が著しいもののわが国では未だ規制が行われていない仮想通貨への規制のあり方等が審議されました。

その検討結果が12月22日に報告書として公表されましたので、今回は、本WGに委員出席していた永沢裕美子より、その概要をリテールの分野を中心に紹介しています。

その他、坂本綾子が学校教員向け講座「金融リテラシーを育む金融教育カリキュラムの検討」について報告しています。

今年も残すところわずかとなりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

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『フォスター・フォーラムだより』No.31     

                2015年 12月26日

                  発行:不定期

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★―★ CONTENTS ★―★

1. 金融審・決済WG報告〜リテール分野を中心に

2. 教員向け講座「金融リテラシーを育む金融教育カリキュラムの検討」参加報告

3.編集後記

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1.金融審・決済WG参加報告〜リテール分野を中心に

12月22日に、金融庁が「金融審議会・決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告〜決済高度化に向けた戦略的取組み〜」と題する報告書を公表しました。

本報告書は金融庁のホームページからhttp://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20151222-2.html

お読みいただけます。

本報告書は、リテール分野とホールセール分野のそれぞれについて、決済をめぐるグローバルな情勢の変化と、それを踏まえた戦略的な取り組み等を提言していますが、ここでは、リテール分野に絞って4点報告させていただきます。

第一は、決済サービスを担ってきた銀行に対する提言です。

まず、近年の決済分野のイノベーションを牽引してきたのは、主としてFinTech企業を含むノンバンク・プレーヤーであると指摘した上で、世界的なイノベーションに取り残されないためには、自前主義を改め、オープン・イノベーション(外部連携による革新)を重視した体制とビジネス・モデルの構築が重要課題であると指摘しています。

そして、当面の課題として、銀行業界が協力して、例えば、すでに米国で始まっている、複数の金融機関が参加する、携帯電話番号を利用した送金サービスの提供の検討等を行うことを提言しています。

第二に、業務横断的な法体系の構築を提言しています。

現行の法体系の下では、「為替取引」と「預金の受け入れと貸付」を固有業務とする銀行には、銀行法により免許制が堅持され、厳格な規制が及ぼされていますが、その一部または隣接する業務を行う場合にはいずれも登録制となっており、銀行法に比べて緩やかな規制となっています。

銀行業

資金移動業

前払式支払手段

貸金業

業務

右の業務全部

100万円以下の

為替取引

プリペイドカードの発行

融資業務

準拠法

銀行法

資金決済法

資金決済法

貸金業法

資格

免許制

登録制

登録制

登録制

この点について、次の二つの問題が指摘されました。

一つは、金融・IT融合の動きを背景に、異なる規制領域にある様々な決済手段が一体的に提供されつつある中で、規制が区々となっていることが、利用者利便の妨げになったり、ビジネスの選択に歪みをもたらしていく可能性があるという点、

もう一つは、決済サービスと融資業務等を組み合わせることにより、厳格な規制下にある銀行業務を規制の緩やかな登録制で行うことも可能であるという点です。

本報告書では、EUですでに導入されている決済サービス指令を参考にしつつ、業務横断的な規制体系の構築を検討することを提言しています。

第三に、急成長をしているサーバー式プリペイドカード(電子マネー)についてです。悪質な加盟店による被害が発生していることから、今年8月に消費者委員会がカード発行者に対して加盟店管理義務を課すなどの規制強化を金融庁に建議したことを受けて、審議が行われました。

この問題については、クレジットカードについて類似の問題が生じており、所管の経済産業省で割賦販売法の見直しが検討されていることから、そちらの動きを踏まえながら、継続して利用者保護とイノベーション促進をどう両立させるかを引き続き検討することを求める提言がなされています。

なお、電子マネーに関する問題を知りたい方は、消費者委員会のホームページのこちらからお読みいただけます。

http://www.cao.go.jp/consumer/doc/20150818_kengi_houkoku1.pdf

最後に、ビットコインに代表される仮想通貨に対する規制についてです。

ロシアのように仮想通貨そのものを禁止している国もありますが、わが国のような自由主義経済圏では“ある行為を禁止すること”が難しい上に、電子的な取引であり国境を越えて行き来できるのですから、仮に禁止しても実効性がありません。

そこで、わが国では、仮想通貨の利用の前提となっている仮想通貨の交換所を営む者(現在7社)を登録制とするとともに、マウントゴックス社破綻事件を踏まえ、利用者保護の観点から、利用者が預託した金銭・仮想通貨の分別管理義務、最低資本金等の財務規制、外部監査の義務付け等を法律で定めることを提言しました。

また、仮想通貨がこれからどのようになっていくかが見えないことから、法令による規制に業界の自主規制を適切に組み合わせて機動的な対応を行っていくことが重要であるとして、法令に基づく自主規制団体の設立を可能とするよう提言しています。

なお、仮想通貨について知りたい方には、事業者のホームページであることをご理解の上、こちらのホームページをご参照ください。https://bitflyer.jp/BitcoinDigitalCurrency

本報告書は、近く招集される通常国会での審議の参考とされることになります。リテール関連では、上記の仮想通貨に対する規制の立法が俎上に上ることになる見通しです。

(報告者:永沢裕美子)

 

 

2.学校教員向け公開講座「金融リテラシーを育む金融教育カリキュラムの検討」参加報告

11月14日に開催された「金融リテラシーを育む金融教育カリキュラムの検討」に参加してきました。

東京学芸大学とみずほフィナンシャルグループによる「金融教育共同研究プロジェクト」の公開講座です。

金融広報中央委員会事務局による講演「金融教育を巡る内外の情勢と年齢層別目標の改訂」に始まり、研究報告として「金融リテラシーを育む金融教育カリキュラムの提案」がありました。

これは、小・中学生へのアンケート結果から、小学校低学年を「イノセント(純粋無垢)」、小学校中高学年を「ロマンティスト(理想主義)」、中学生を「リアリスト(現実主義)」という発達的特徴があると捉え、学習指導要領や金融リテラシーマップとの関連も踏まえ、当該研究において実践されたもの、実践されていないものを整理し、今後の課題を検討したものです。

子どものお金への関心は高く、これを教育課程にどう位置づけるか、関連のある教科の接続や連携により効果的な学習が期待できること、中学校では地理的分野と歴史的分野での金融教育が重要であることなどが報告されました。

分科会として、社会科、家庭科、道徳などの科目ごとに授業の実践報告も行われました。

子どもがお金と出会い、お金を把握するための場は、様々な科目、場面にあることを改めて感じるとともに、日々のやりくりに追われる大人の方が却って狭い意識でお金を捉えてしまっているのかもしれないと思いました。

土曜日にもかかわらず、数多くの教員が参加し、耳を傾け、活発な質疑応答が行われました。

共同研究の概要は、こちらから。http://www.mizuho-fg.co.jp/u-gakugei/index.html

(報告者:坂本綾子)

3.編集後記

◆世相を表す流行語大賞というのがありますが、私にとっての今年の大賞は「フィデュシャリー・デューティー」でした。思い起こせば2004年12月に当会を立ち上げた時に、設立メンバーで「私たちが考える良質な金融商品の4つの基準」について喧々諤々の議論をしましたが、全員文句なしで決まったのが「フィデュシャリー・デューティーを全うしていること」でした。当時はこの英語を知らない方も多く、「受託者責任」という日本語を使うことにしましたが、あれから11年を経て「フィデュシャリー・デューティー」という言葉が当然に言われるようになったことに感慨を覚えずにはいられません。この概念は英米法から来ているため、適当な日本語を当てることはあまり生産的とは思えません。むしろ、具体的な事例を挙げて、自社の「フィデュシャリー・デューティー」はこんなことだと投信会社や販売金融機関には胸を張って語っていただきたいと思います。

金融審の投資信託・投資法人法制の見直しWGから3年が経ちました。来年は、投資信託がこの3年でどう変わったかを検証するフォーラムを開催したいと思っています。ご案内は年明けのメルマガでさせていただきたいと思っています。来年もどうぞよろしくお願いいたします。 (永沢裕美子)

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